2001/8/16(Thu) @LIVE HALL CARAVAN SARY

 

元ちとせ
椎名純平
Keison

 

 
元ちとせ

 

1. コトノハ
2. 竜宮の使い
3. BIRTHDAY
4. 精霊


子供の頃から島唄を歌って来られて、ここに来てポップスをやるのは抵抗なかったですか?
「最初に東京で音楽をやらないかって言われた時には、一切興味もわかなかったんです。生きていくために歌う(歌で生計を立てる)という事は考えた事がなかったし、ましてや島唄以外のものを自分が唄って生きて行けるとは思えなかったし。一番やりたかった仕事は美容師だったし。」

そこまで思っているのに、何がきっかけでこの世界でやって行こうと?
 「美容師が出来ないんだったら(大阪の美容院で働くがパーマ液が手に合わず医師に止められた)島にいて何するんだろうって考えて。どうせ帰るんだったら、一回勝負っていうか、歌ってみたいなって思って。」

"島唄"の定義って何なんですか?
 「奄美の言葉で、昔の人たちの生活や、昔からある昔の人間のお話や、お祭事とか豊作への願いを唄う歌。すごくファルセットが効いてて。」

他の島の島唄は歌わないんですか?
 「全然ですね。私が唄える歌でもないと思ってるし。沖縄の島唄は、沖縄の歩んで来たものとかが分かる人が唄った方がいいと思うので。どこで唄ってもいいんですけど、私にとってはすごく真剣にやって来たものだったのでそういう風に感じます。本当は誰が唄ってもいいんでしょうけど。」

 なるほど。本当はよそ者が唄える歌じゃないのかもしれないですね。そこで育って肌で感じている人だからこそ唄える歌。奄美の島唄だけでもたくさんあるんですか?
「ありますね。私が唄えるのもほんの1/3くらいで、聞いた事もないよいうなものがたくさん残ってる。」

1/3で何曲ぐらいですか?
「40〜50曲ですね。だから120〜150曲とかあるのかな、本当はもっともっとあるんでしょうけど人の耳に残っているのは、それぐらいでしょうね。」

 じゃあ音源として残っているものは、実は一部にすぎず、おばあちゃんとかが口伝いに唄い継いで来たもので、消えて行ったものもあるんでしょうね。
「もうほんと、唄われるのは限られて来てますね。」

そうするとやはり島唄の歌い手さんというのが貴重な存在になって来ますね。これからも島唄は唄って行くんでしょ?
「ええ、普通に、普通に、趣味として。でも、わたしぐらいじゃなくても、最近はすごく増えてるんですよ、若い人も。今までおじいちゃんおばあちゃん達ばかりが唄って来たものを、最近は島を離れてまた戻って来た人達が、島を離れてる間にいいなって思い始めてイベントをするようになったんです。そうやって若者の耳に届く場所で歌われるようになった事が一番大きい影響なんじゃないでしょうかね?」

やはり体の中にあるんでしょうね、自分たちが生まれ育った土地のリズムとか。
「そんなに決まり事とかないんです。譜面もないし。人の歌を聞いて三味線の手を真似てずっとやって来てるんです。音だけでずっと繋がってるもの。だから原曲とは全く違うかもしれないし。私達のは人前で唄う為に出来上がった島唄になって来てるでしょうし、それは新しい時代のものとしていいと思うんですけど。おじいちゃんとかが歌ってたものは、もう何を歌ってるのかサッパリ聞き取れなかった。」

セカンドミニアルバム「コトノハ」は前作がカヴァー曲だったのに対し全曲書き下ろしですが、"自分の曲"が出来てみていかがでしたか?
「いい歌、もらったなって。いろんな人に作曲してもらって。私の歌って、くるくるコブシが回ったり、変な方に音が行ったりするんですが、それをすごーくよく分かってくれていて、すごくいい曲に仕上げて下さってます。今回のアルバムは自分でもよく聞きます。やっぱ自分のオリジナルですし、自分でも本当によく出来てるって思ったので。」

あのコブシは訓練するんですか?
「島唄の中である日突然生まれて来て、それがもう癖でとれないって感じです。」

アレだけは譜面に書けないですしね。"音"だけで継がれて来た独特の唄い方。
「大変だったんですよ、レコーディング(笑)。私、ドレミが全然分かんないんですよ。線の上にこんな丸たんぼ書かれて・・・(音符のことを言っている)。」 (一同笑)

ドレミが分からないミュージシャンって珍しいし、自分も回りも大変かもしれないですけど、そのままでいて欲しいような(笑)。
「はっはっはっはっ!ドレミファソラシドの音は分かってるんですけど、唄ってる時に『そこもう少し上げて』とか『シャープ』とか言われても、違ってるのがどこかがもう分からない。大問題です・・・」

 '98年に日本親善大使としてブラジルに渡りましたがここでの思いでは?
「老人ホームみたいな所に島唄を唄いに慰問したんですが、全然奄美の人じゃないおじいちゃんおばあちゃんが、島唄を聞いて『日本を感じた』って泣いちゃって・・・。感動した・・・私が逆に。ずっと帰ってないらしく、帰ろうったってすごい距離ですしね。」

これからどんな音楽をやっていこうと思っていますか?
「今まで、結構ゆっくりめの選曲だったけれど、いろんなイベントとかに参加させて頂いて、後ろにたくさんバンドがついてたり、バァーッと唄う人たち(笑)と一緒にやってみて、これからはそういう盛大な歌にも挑戦してみたかったり。でもあんまりコレッていうものはないんです。島唄以外の音楽をすごく知っている訳ではないので、今はたくさんの音楽を知るという時期ですかね。」

ステージに立つ元ちとせは、精霊が舞い降りたような、いや、精霊そのものではないかと思ってしまうほど。不思議な声・・・声なのか?けがれのない滴が、大地にぽとりと落ちるまでの小さな震えのような。彼女がいるだけで、そこは奄美の森になる。奄美の海になる。奄美の風が吹く。完全にトリップしていた私。

 

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椎名純平  

1.Mercy,mercy,me〜What's going on
2.未来
3.逃げろ!
4.指
5.白昼夢
6.仮面
7.無情

夏にリリースされたデビューアルバム『椎名純平』ですが、曲名がどれもタイトですね。
 「楽曲にも言えることなんですけど、できるだけシンプルにしたかったんです。タイトルだったら、一言だけである事によって、いろんな想像ができるじゃないですか。例えば『仮面』だったら、お祭とかである"おめん"だったり、仮面舞踏会だったり、オペラ座の怪人のような仮面だったり・・・人によっていろんなことを想像すると思うんですよ。想像力を広げてもらって、椎名純平が言いたい仮面というのはこういう事だったのか、という人の心の動きのようなものが面白いなって思って。」

あと英詩がほとんどないんですよね。
「いろいろ理由があるんですけど、日本の歌謡曲って英語が混じってんのは何でだろうって、あまり良くない印象だったんです。作る立場になった時、英語を入れたほうが確かにやりやすいんですよね。そこで挑戦してみたいっていう気分ももちろんあったし、そうやっていくうちに日本語の面白さというのが出て来たんです。さっきの仮面の話もそうですけど、日本人だからって事もあるけど、ワンフレーズの中にいろんな意味が含まれてたり、奥深さがあったり、そういう部分にも惹かれてる。そういう意味で、英語を絶対使わない、とまでは言わないけど、日本語でやれる事はいっぱいあるなって思っています。」

あと日本語は含みのニュアンスが持たせられますよね。
『仮面』の中の男女も"かけひき"してるなって。あれも日本語だから表現できる世界ですよね。 「逆にああいう内容を英語でやろうとするとまた違った感じになったでしょうね。」

それにしても、声が太いですねー。でいながら、色っぽい・・・。ボイストレーニングとかはされたんですか?
「やらなきゃいけないなって思いつつ結局やってないんですけどね。綺麗に言うと独学、我流ですね。」

印象的だったのが酸っぱめの(笑)トランペットの音。色っぽ〜い椎名さんの声との対比が面白いです。
「あくまで個人的な好みだけど、サックスがあまり好きじゃなかったし、ホーンセクションを入れることもあまり好まなくて。そこにたまたまいいトランペッターが!もともと他のバンドでやってたんですがこっちでも手伝ってもらう事になって。縁ですね。もともとトランペットの音は好きですし。」

楽器にこだわりがありますか?
「自分が鍵盤を弾きながら歌っているので、鍵盤ですね。あとは何だかんだ言って古い楽器の方が良かったりするんですね。出来ることなら、古い楽器をいろいろ持っておきたいな、買い占めたいなって思います。」

曲を作るときは、鍵盤ですか?
 
「鍵盤で作る時もあります。でもわりと頭の中で想像で組み立てる事の方が多くて、それである程度形になりそうだったら初めて鍵盤触ったりするんですけど。」

どういう環境で曲作りしてるんですか?
 「机や鍵盤の前に座って、ってなると面白いもの浮かびにくいな。やっぱり出かけてる時とか車の中とか。もちろん"さあ作るぞっ"って時もあるんですけど。わりと、ランナーズハイじゃないけど、ライターズハイみたいな感じで書いてるうちにが〜って出来る感じですね。出て来なくって苦労してるようなのはあんまりないですね。このアルバムの中の曲はアマチュア時代に書いた曲がほとんどです。」

その帽子はトレードマークですか?
「結果、トレードマークになって、とるにとれなくなった(笑)。そもそもプライベートでかぶってたのがだんだんトレードマーク化して来て・・・髪型はここ何年かは、わりとボーズな感じ。バリカンでね。やっぱバリカンがないと!ただこの耳の後ろ!あと肌との境界線だけは重要、抜けがちになるから(笑)。」

大学で東京へ出られて、本格的に音楽を志して行く訳ですけど、その頃はどんな音楽を聴いていましたか?
「ファンクやソウル、R&B、ヒップポップ・・・節操なく聞いていたけれども、ほとんどが黒人音楽だったかな。」

曲にもよるでしょうけど、自問自答してるように感じました。自分で自分を探っているような。
「そうかもしれないなあ。このアルバムを作るにあたっては、このアルバム全体でストーリーを作りたいっていうのはありましたが。ラブストーリー的なね。」

これからはどんなことに挑戦してみたいですか?
「音楽のスタイルは基本的には変わらないかな。バンドのより一体感みたいなものを深めて行ったりとか。自分のスキルを上げて行ったりとかですね。あとは、マリンスポーツとか、何か趣味を持ちたいな。少なくとも最近はそういう趣味らしい事をやってないし、回りで釣り好きやマリンスポーツやってる奴がいたら、あーいいなあって思うし。音楽から離れてみないと分からない事ってあるだろうし。」

最後に、四国のにいる、椎名純平ライブ未体験の人たちにメッセージを。
「CDも一生懸命作っているしいいものが出来たと思っているけど、俺らは基本的にライブが得意分野なんで、とにかくライブに来て欲しいですね。CDがあってライブがあって初めて音楽やってる俺らの立ち位置みたいなものが確立されるのでね。」

生バンドのサウンドが、より椎名純平を椎名純平らしくしている。痛烈に響き渡るトランペットの音にソウルフルでメロウな歌声が乗り、1曲1曲と演って行くにつれ、開場は酔いしれて行った。曲の雰囲気やルックスの感じとは、ガラリと変わる人なつっこいMCにまたくすぐられた。

 

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Keison

1. Fine
2. 旅に出ようか
3. みどりのパンツ
4. 風をさがして
5. Babe
6. Knockin' on Heavens door
7. vivid
8. 水玉模様

高校卒業してから放浪生活をしていた時期もあったとか。今はプロのミュージシャンという基盤があるけど、それでも出て行っちゃいそうな雰囲気があるんです(笑)。
 「うーん、出たいですね。暇な時見つけて行きたいですね。あのころに戻ってみたいとも思うし。」

今までどんな所を旅してきましたか?
 
「ハワイとか、オーストラリアとか、この前レコーディングでスペイン、モロッコ、ロンドンへ行って来て、あとは、近くの海でボーっとしてたり。」

今後プライベートで行くとしたら?
「やっぱ暖かい所がいいですね。南の島とか、沖縄の島にも行きたいんですよね。」

なんでそんな風に出て行きたくなるんでしょうね?
「なんだろうな、・・・現実逃避・・・」

 (笑)現実逃避だったんですか!?でも行けば行くほど欲が出て来ませんか?
「そうですね。また行きたくなりますね。」

そうやっていろんな所でいろんなものを見たり経験した事が、自分の音楽に影響しているんでしょうか?
 「してたりしてなかったり・・・(笑)」

どんな旅の仕方だったんですか?
 「最近は行ってないですけど、バックパックで適当にべろーんって行く感じです。仕事で行った時もこのまま一人でどっか行きたいなーって頭ん中では思ってますね。」

まるで肩書きのように、『海とロックをこよなく愛する野人』と書かれるんですか、この『野人』ってのは・・・?
「どうなんでしょうね(笑)でも『野人』なんですよね、基本は。」

 『野人』の定義って?
「人の見方によって違うと思うけど、僕は水浴び好きだから・・・って感じかな?どこでも飛び込めるとろこあったら飛び込んで。どこでも寝転がって寝られるし・・・」

ああ、じゃあ私も野人かもしれないな。
「いいですねえ。そうやって野人仲間が増えたらいいですねえ(笑)。」

体と感性の趣くままに行動に移せたら、どんなにいいかって思いますね。 さて、ニュー・シングル『Babe』ですが、この曲にはどんな思いが込められているのでしょう?
「好きな人がいて、でもいろんな欲があって、例えば旅でも何でも1人で行っちゃうんですが、"待っててね"という感じですね。その間、好き勝手にやりたい自分があるんだけど、でもそんな自分を待っていてくれてる、そんな感じですね。・・・実は苦手ですけどね、そういうの(笑)」

でも恋人を置いてでも出たいという思いは、たぶん続いちゃうんでしょうね。
 「うん。そういうジレンマを曲にしました。そういう人に聞いてもらえたら。」

でも本当に好きな相手なら、旅なりに出て、いろんな体験していろんな人に会って大きくなって帰って来るんだったら、多少の我慢してもいいから、行って来て欲しいと思いますけどね。
「もしそれで彼女が出てっちゃったらそれまで(笑)。」

ところで、このカラフルなジャケットはどこで撮影されたんですか?
 「これはオーストラリアです。ポラの方だとちゃんと目線が合ってたんだけど僕が落書きしちゃって・・・で、こっちになったんです(笑)。」

カップリングの『アンナカンナ』は歌詞がシンプルだからこそ想像が広がります。私にとって"可笑し切ない"感じです。自分の名前を忘れてしまう、こんな状況に実際になった事があるんですか?
 
「うん。ありましたね(笑)。いつもではないですけど、たまに・・・フラッと出て楽しみすぎちゃうと『やっべぇ、帰んないと』みたいなね。」

 アンナ、とカンナって何ですか?

 「これは、あんな、かんな・・・何か、あんな・・・"何だろう"みたいな事で、深い意味はないんですよ。」

演奏される楽器の中で重視しているものが特にありますか?
 「スライド、とか、やっぱギターですね。」

『Babe』のギターフレーズも印象的ですが、『アンナカンナ』のべースの音も心地よく体の中に入ってくる感じで好きですね。人間に対して無理のない音だと思うんです。
 「グルーブがいい感じですね。」

歌詞にしろ、メロディーにしろ、声にしろ、押し付けがましくないのが好きです。
「そういう風に思ってくれればいいかなって。」

人に聞かせるため、とか、ミュージシャンとして音楽作らなきゃっとかじゃない、自分が気持ちよくなる為に発しているのが、たまたま私たちの耳に入って来ている、という感じがします。だからこそ"媚び"てないKeisonさんの楽曲が私たちも気持ちいいんです。
「自分でも、唄う事によって開放感は味わいますね。開放される事は好きだから。開放的な音とか自分勝手な詩とか。」

あまり作りこんでない感じですよね。
「一回ポッて出てきた言葉は、変えられなくなっちゃうんですよね。」

話は変わりますが、FEVORITE ANIMALがニワトリ、とあるんですが・・・
「食べても美味しいし、卵も産んでくれるし、卵生まなくなったら・・・」
シメる!?

ライブはとにかくかっこよかった!!羨ましいくらいステージの上で気持ちよくなっているKeison。自然体すぎる。その様子を目で見て、耳で聴いて、肌で感じ、私たちも気持ちよくなっていく。塩辛く乾いているのに優しく心地いい音。ライブを見ててこんなにも開放されたのは久々な気がする。Keisonが旅をしながら、はたまた放浪生活をしながら、何を見て、感じ、つぶやいたのか。あまり多くを語らないKeisonだが、今日のライブの中でちょっとだけ教えてくれたような気がした。

 

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