concert report

 

ゴスペラーズ
─ゴスペラーズ坂ツアー 2002GT─
5/1(水)@香川県県民ホール・グランド

 ゴスペラーズとしては初の香川LIVEとなった当日、会場は今や遅しと待ちわびるファンで、あっという間に埋め尽くされた。開場中には、ソウルやR&Bを中心にしたDJが入るというニクイ演出で、アダルトな雰囲気が更に観客達のモチベーションをアップさせる。ダークなステージの中央にワインレッドの長椅子、そこにさりげなく座っての登場となったメンバー達。アースカラーのスーツに身を包み、途中組替える足も様になる。会場からは瞬く間に手拍子が巻き起こり、「カッコイイー!!」という歓声がこだまする中、『侍ゴスペラーズ』でステージは幕を開けた。DJに乗せての登場から、オープニングへと滑らかに繋がった様はさすが。"♪今ここに〜高松に〜"という変えフレーズも手伝ってか、開始数分で彼らは観客の心をもステージ上へ引き上げてしまった。ミラーボールが回る中、流れるように2曲目『Get Me On』へ。「遂に、ココ香川にやってまいりました!今日は僕たちの歌を体で感じてください!」とはリーダーである村上てつや。その言葉で高まる胸中、彼らが用意してくれたのは"トウキョウ スヰート メドレー"。『告白』『誓い』を含む約20分にも及ぶバラード・メドレーは(普通ならここで退屈になってもおかしくはないのだが…)、彼らの持つ繊細さや表情の豊かさ、更には表現力の幅広さを十二分にアピールしたものだった。まるで夢の中にでも誘われたような、えも言えぬ気分になっていたところで、ハッと我に返るように始まった名曲『ひとり』『永遠に』。この構成は、もうズルイ。反則である。緩急つけて構成された楽曲達は、時に激しく・時に優しく、ゆっくりと心の中を温かい気持ちで満たしてくれた。
 
 ステージが明るくなり、一呼吸ついたところで地元話に移る。「本場のさぬきうどんが食べたかったので、昨年の9月に電車で香川へ来ました!」と酒井雄二。安岡優との絶妙な掛け合いで栗林公園などの話が飛び交う。今までのカリスマ的雰囲気をあっという間に吹き飛ばしたこのMCでは客席とステージまでの距離が一気に近くなった。後半戦は朝日新聞社春のキャンペーン2002FIFAワールドカップTM応援ソングにもなっている『エスコート』から。シンプルなメロディ・ライン、リードが次々に入れ替わる為ゴズペラースの音楽性の幅広さをさ・ら・に強調するダンスチューンで、会場の雰囲気もまたガラリと変化。『ポーカーフェイス』ではあっという間の衣装チェンジ&ステージ上の長椅子もメンバーの白いスーツと同じカラーに衣装替え。歌だけでなく、視覚からも楽しませてくれた。そして第一次ゴスペラーズの基盤を作ったと言っても過言ではない'96年の作品『熱帯夜』。暑い夜に繰り広げられるラブストーリーを、激しく歌い上げたソウルフルなヴォーカルが心の中をも熱くする。「新しい地図を更新していくように、新しい土地で、いろんな人たちと出会う…これこそが僕らがやりたかったこと」と村上の言葉の後に続いて始まった『ATLAS』。初期の初々しい感じが残るこの曲は"♪プーラタナースのー"というフレーズを聴いた瞬間、何だか目頭が熱くなった。本編ラストを飾ったのは『Five Keys』。会場を巻き込み、全身全霊で歌い上げた、とても素晴らしい一曲だった。鳴り止まないアンコールの後はお約束となっている"なりきりゴスペラーズ"。会場を3パートに分け、大合唱したあの一時は、ファンにとっても彼らにとっても思い出深い時間となっただろう。

 ゴスペラーズに代表され、数多く存在するアカペラグループの中でも、彼らの作品を聴いていて素晴らしいなと思うのは、純粋にアカペラからスタートし、そこに独自の要素を加え自分たちのスタイルを確立してきたこと。しかもそこには音楽に対する誠実さと、敬意が込められていて、純粋に歌うことの楽しさを教えてくれる。楽器がなくても、音楽を愛する気持ちさえあればどこでだって、いつだって歌う事ができる…「皆さんの傍にずっといられるように、僕らは歌いつづけます…」そう言った彼らの言葉には、前述したような気持ちが込められているのではないだろうか?私たちにハーモニーという名の魔法をかけ、アカペラという歌を最も身近にしたグループ、ゴスペラーズの音楽とは彼らの魂が奏でる心のハーモニーなのかもしれない。

TEXT by a.

SET LIST

M1.侍ゴスペラーズ
M2.Get Me On
M3.It Should've been Me
M4.残照
M5.DAWN
M6.トウキョウ スヰ-ト メドレー
   告白
   東京スヰ-ト
   この世界どこかに
   AIR MAIL
   誓い
M7.ひとり
M8.永遠に
M9.エスコート
M10.ポーカーフェイス
M11.熱帯夜
M12.八月の鯨
M13.ATLAS
M14.真夜中のコーラス
M15.FRENZY
M16.Five Keys

EN-1.こういう曲調好き(なりきり)
EN-2.Body Calling
EN-3.約束の季節

 


Yuji Sakai


Tetsuya Marukami


Youichi Kitayama


Yutaka Yasuoka


Kaoru Kurosawa

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