「こんばんは!っと言うより、ただいま!って感じかな?エヘヘッ。」抜群の笑顔を携えて現れたのは、愛媛県松山市道後生まれの石原千宝美。嬉しさが体中にみなぎり、それが彼女の体からいろんな状態で発せられている。「生まれたこの松山で、お客さんもバンドもみんなみんなで忘れられへん夜にしてってね。」そこここに笑顔の花が咲き始めた。デビュー曲『冬の匂いが消える頃』あぁ、この曲をどれだけ生で聞きたかった事か。おかえり、千宝美ちゃん。SAKURAをコーラスに呼び込み2曲披露。ちょうど実り始めた愛媛のみかんを、皆で楽屋で召し上がったらしく、「ここは太陽が近い気がする。太陽をいっぱい浴びたフルーツ食べて、エネルギーいっぱいお腹に詰め込んだよー。」とSAKURA。そして2人の優しい声で見事なまでに歌いあげた『Time after Time』。子供を背に負ぶって揺れるお父さん。お父さんの大きな背中ごしに、そのちっちゃい瞳で見た光景は、坊やにどう映っただろう?"I'm wating for・・・ time after time."「私はこの歌は友情の歌だと思うの。」と言っていたSAKURA。初めは肩に力の入っていたお客さんも、歌の魔法によってときほぐされ、放たれ、思い思いに"ライブ"を楽しんでいる。2人抱き合いバトンタッチ。 少し胸の開いた赤いドレスをカジュアルに着こなしたディーバ歌姫・SAKURA。強くて柔らかでのびのある歌声に、感情の輪郭がはっきりとして来るのが分る。ストレートに客席に届いて来るたっぷりの声量に、オーディエンスからも溜息が漏れる。が、MCは関西弁で茶目っ気いっぱい。「今日は客席にお母さんがいっぱいいるみたい。今日は温かい。今晩お母さんに電話したくなった・・・」"愛と平和"をテーマに作ったカバー・コンピレーションAL『あろは』の中でSAKURAが歌っている『ロックンロール・ウィドウ』は、ジャジーにアレンジされ「うらびれたロックンロール」となり、場末の酒場で聞いているかのようだった。会場中の皆完全に引きずり込まれていた。圧巻のステージを展開したSAKURAが今日の出演者全員を呼び入れ、AL『あろは』から『シンシア』を大合唱し、本編終了。 もう一度、もう一度、あの"aloha"な空間を感じたい、そんな願いのこもったアンコールの手拍子が響いた。再び姿を現した5人に、惜しげもない暖かな拍手と歓声が向けられた。出演者とお客さんとの距離が物理的にも精神的にも近く、幸福で和やかな一夜だった。美味しい音楽をおなか一杯にいただき、ゆるりと流れる秋風の夜道を帰りながら、世界中がこんなalohaなスピリットで満たされるといいな、と思った。 Text/Photo:Nao.K |