![]() 1st ALから感じていた、 "今"を大事にするコブツイの姿勢。"今"を充実させる為には「月並みだけど、今有る事一つ一つをキチント一生懸命やるってこと」。当たり前の事だけど大事な事。日々の生活の中、忙しさや豊かさに紛れて、私たちが忘れてしまっている事。このアルバムを聞いて、目の前でバチンと何かが弾けた気がした。 3rd AL『ザ・コブラツイスターズV(さん)』は実に1年5ヶ月ぶり。 「シングルをどれにするかで時間かかってたんです。」 では『いつかの少年』をシングルに選んだ理由は? 「一番ポイントになったのは、この曲は実はアマチ ![]() 『七転八倒』『ガムシャラ人生』『いつかの少年』『骨になるまで』『ゼロからの始まり』・・・ただ曲名をなぞるだけなのにこみ上げて来るこの熱い物の正体は?彼らを震源地にして津波が押し寄せてくる。 「これはドラムの加藤が描いたものだし、題字はリーダー。手作り感覚でいったら面白いんじゃないかなと思って。」 というアルバムジャケットには、1匹のコブラが、小さき島国・日本を守るように取り囲み、渦巻く海をうねりながら泳ぐ。リーダー相馬の出身地の青森、津軽海峡には鮮やかな虹がかかる。絵巻物さながら横91cmの長大作。随所に施された彼らのこだわりの中に、遊び心が見え隠れする。それぞれの出身地も、相馬が青森、棗田と加藤が山口、そして川畑アキラが与論と、コブラに守られた日本の、端から端。 「北も南も、都会的なロックから何から、そういう日本のイメージです。青森のねぶた、与論の三線、自分たちの音楽の柱、特色の一つですね。」 『夢の旅人』という名曲があるが、今作も "旅"というテーマが根底に流れていると思えてならない。 「自分らが田舎から東京に出て来たというのもあるんですが、世界をいろいろ見てみないと分らないという部分があるし、自分の大きさも分るというか。そういう意味で旅ってやっぱり必要なものだと思うし、どっかに出て行きたいという気持ちは常に心の中にあります。民謡の本の中に『歌は旅人』というのがありまして、それを読んだ時バキンッ!と来ちゃいましてね。それは演奏者が色んな所を旅して歌を唄う事によってその歌が直接いろんな町の人に伝わって、その軌跡がちゃんと生まれるというのです。それはすごい事だな、それを仕事に出来るって事はすごくありがたい事だなって思いましたね。」 物理的に旅をしながら唄う彼ら。そしてまた、この世に生れ落ちてからは試行錯誤を繰り返しながら人生をガムシャラに旅している。『いつかの少年』は膝を抱え、輝く瞳で見、雑音の無い耳で聞く。では、そんな川畑アキラはいったいどんな少年だったのだろう。 「小学校から高校までずっと野球少年でした。結構積極的で、人前で唄ったり冗談したりするのも好きでした。中学校の思春期の頃ロックを聞きだしてから性格がひねくれ始めたかな(笑)。」 『いつかの少年』のジャケット写真は球場で撮影されたものだ。 「プロモーションビデオやジャケット写真も細かい所に至るまで、自分らのイメージを出しました。歌詞は直接的にそうじゃないけど、少年といえば「少年野球」だろうというイメージがあって。懐かしい感じ。野球場に行ったのも久しぶりでしたね。身が引き締まるというか、背筋がぴんと伸びるような。そういう楽しい撮影でした。」 野球少年は音楽と出会いバットとグローブをマイクと三線に握りかえる。そして生まれた楽曲たちは、趣くままに行動に移せない私たちの背中をポンッと押してくれる。 「岡本太郎さんがすごく好きで、"太陽の塔"とか見てると、とてもじゃないけどちっちゃい事にこだわりすぎて自分がちぢこまるのは馬鹿らしくなって。何をどう思われようと、どう映ろうと自分の感性のままドーンって表現してしまう感じ、それがすごくロックにも通ずる気がするんです。自分でやってみなきゃ分んないでしょみたいなところ。彼は亡くなりましたけど、50歳過ぎてからいきなりスキー始めてビュンビュン・・・そういう物事を恐れない所って素晴らしいです。人間賢くなって来ると恐れというものが出て来ますから。生きて年取るごとにより開けるというのが理想ですよね。」 確かに子供は大胆で自由だ。うらやましい、と思ってもみたが誰もがそんな子供、「いつかの少年」であたったはず。"歳相応"というヘンな常識の中で生きたくはないと思った。そう、そんなものを打ち破ってくれるのがコブツイなのではないだろうか。 Text/photo:Nao.K
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