第13回 酒蔵コンサート |
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当日はあいにくの雨、にもかかわらず朝からお並び頂いていた方もいらしたとか。「待ってたよー!」「キャーッ!」盛大な拍手と歓声で迎え入れられたBEGINの3人、会場の手拍子をうけてのM@『愛が走る』が今日のオープニングだ。「雨の中、傘がカラフルに揺れているのをすまない気持ちで上から見てましたよ。5年ぶり?待たせたね、ごめんね。」あぁ、この優しさ、この声。日常の慌しさにカサカサになっていた心がしっとり潤ってゆく。 「紅白に出て『蛍の光』を唄いながら“来年は何かが変わるだろう”と思いましたが、何も変わりませんでした(笑)。ま、同じペースでやって行けるのが一番なんですね。今日はおしゃべりでもしながらゆっくり進めていきましょう。」ステージとお客さんの物理的な距離が非常に近く、当たり前のように言葉を交し合ううちに心の距離もどんどん近づいていく。比嘉栄昇のまろやかな歌声が切なく響いたデビュー曲MC『恋しくて』、上地等のピアノが弾けまくったMD『No Money Blues』、洗濯板と事務所で拾ったというシンバル(たぶんザザンオールスターズが捨てたもの?だって)などで手作りした奇妙な楽器をスプーンでかき鳴らしたME『おっちゃんタクシー』。 後半戦は、沖縄は八重山の船旅へといざなう。BEGINが島唄を作る時にだけ現れる心の住人“オモトタケオ”も降臨して来たようだ。三線軽やかなMH『竹富島で会いましょう』。だんだん自分の体験とオーバーラップして来る。白い道を抜けて辿り着いたコンドイ浜、そこで偶然出会った一人の旅人、星の砂を拾い集めながらモンパの木陰で話をした。彼は今や私の人生の中でも大切な人の一人となっている。MI『恋の島 鳩間島』、西表島から郵便船に乗せて貰い渡った小さな島。物資の少ないこの島で郵便物を送りたい私にそうめんの箱を代用して小包を作ってくれた郵便局のダンディーなオジィ。内地の子供3人を里子として育てていた優しいオバァは美味しいジューシーを食べさせてくれた。そして、いきなり転がり込んで来た私をずっと泊めてくれた鳩間のおっちゃん。ヤシガニを獲りに連れてってくれた。日暮れが近づくとボロボロの軽4車で浜まで迎えに来てくれた、「雨が近づいてるぞー!」と言いながら来てくれた事も。沖縄の人は本当に暖かい。・・・BEGINの歌声と明るいリズムにかき立てられたのはなぜか不思議な切なさだった。ツーッと涙が頬を伝っては酒蔵ホールの床を濡らした。 「今日は酒蔵でこの歌を唄おうか迷いましたよ、一応気を遣ってるんですよ(笑)。」待ってました!MK『オジー自慢のオリオンビール』。オリオンビールはイチ企業ではなく、戦後復興の願いを託したウチナーの夢でもあったそうだ。この三ツ星に希望を込めたのだそうだ。“あっり乾杯!”一緒に叫びたかった。ML『かりゆしの夜』では、お客さんの「イーヤーサッサ!」の大合唱に胸が熱く熱くなった。「高知の人は鳴子踊りで、徳島の人は阿波踊りで、思い思いに踊ってください、それがカチャーシャーなんです。チャンプルーです。」カタチなんて関係ない。音楽につられて体が動き出したら、そう!もう任せてしまおう。 ほてった体をそっとなだめ、高ぶった心をほっとさせ、いろんな沖縄の姿や自分の姿を完結させてくれたのは、本編ラストのMM『島人ぬ宝』。ゆっくりと、ポトリ、ポトリと涙がこぼれていく。あちらこちらで鼻をすする音が聞こえる。「もっと暮らしの中に音楽があったらもっと楽しくなるだろう。音楽を届けるだけじゃなく、音楽を楽しむ事も伝えて行きたい。これが今年のBEGINの目標…というか、夢かな。」そういう思いでBEGINが考案した4弦の楽器“一五一会”。誰でも指1本で弾けるというシロモノだ。(写真右下 島袋優が手にしている物)“一五一会”の音色に乗って沖縄の青い海、青い空、みどりの風が脳裏に浮かんでは消えて行った。
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