ライブの楽しみ方は人それぞれだ。ライブの受け止め方も人それぞれだ。顔や体つき
が違うように考え方もみんな違う。だから今回のライブレポートは男と女の両極から
捕えてみた。ここから何を感じるかは、むろん、みなさんの自由。中村一義と100
式が造り出したあの素晴らしい空間を…あなたならどう表現しますか?



どうしようもなく落ち込んだ時、もう何もかも嫌になって逃げ出したくなった時、ふと耳にした音楽に救われる瞬間がある。そのメロディーに、詩に、心がシンクロして、少し心が軽くなって、自分はひとりじゃないんだと、気付かせてくれる。私にとって彼の歌はそんな存在だ。そして、彼の歌からメッセージを受け取っているのは私だけじゃない。11月26日、高松オリーブホール。会場を埋め尽くす観客一人ひとりが、<中村一義>そのひとの歌を長い間待ち焦がれていたことだろう。開演前、彼が現れるであろうステージを、昂揚した顔で一心に見つめる観客たち。そして、待ちに待った彼の登場に一瞬息をのみ、その後わき起こった拍手と歓声がその想いを語っていた。
 静かにはじまったギターのイントロから、一気にバンドのぶ厚いサウンドへ巻き込まれていく。100式というすばらしいバンドにめぐり逢えた彼が、のびのびと歌っている姿がそこにあった。初期作品『犬と猫』。この現実を生きていく中で感じずにはいられないもやもやと渦巻いているもの吐き出し、<僕として僕は行く>彼は声高らかに宣言し、その熱い温度のまま、『1,2,3』で早くも会場の温
度は沸点へ!風邪をもろともせず「100式は無敵!みんなで歌ってね!」とあおる一義。エッジの効いたキレのある100式のプレイが、ビートが、鼓動と重なってゆく。次々と繰り出される愛すべき曲たちに、オーディエンスも肩を組んでその大きくゆたうヴァイヴに身を委ねる。ストイックなまでに真摯に音楽とそして自分自身と向い合ってきた彼だからこそ、リアルで直接心の奥へずしっと訴えかけてくるその詩で、嫌味なく私たちを限りなきポジティブなベクトルへ向かわせてくれる。そして、天才と言われる彼の音楽性の懐の深さと100式が紡ぎ出す音のクオリティの高さには全くもって脱帽!またお約束となりつつあるご当地コーナーでは、アドリブセッションで“こんぴらブルース”のプレゼントが。MCで会場を爆笑の渦に巻き込み、ニューアルバム『100s』を中心としたセット『メキシコ』…で会場はさらにヒートアップ!激しいギターリフ、渾身のライブパフォーマンスに波打つオーディエンスはうねりと化してゆく。続く『キャノンボール』から一気にラストの『ひとつだけ』まで、声を限りに歌う彼に答えるように大合唱の嵐!!―観客から彼らに向かって差し伸べられた幾百もの手のその先が、一瞬彼らにつながっているように見え、会場が一体となったその瞬間に鳥肌がたった―。鳴り止まない拍手。それに答えたアンコール『笑顔』『ロックンロール』という選曲に「ヤラレたっ!」。両手を掲げ、惜しみなき拍手に答えた彼らの満面の笑み。涙と感動と熱気で、もみくちゃだったけど、会場にいたみんな笑顔だった。ラブ&ピース。みんなのハッピーな気持ちが会場を包んで、いつまでもその余韻が消えそうになかった。

text by hiroko okano♀




『犬と猫』という曲からライブは始まった。一義君は、ライブ当日風邪をひいていて本調子ではなかった。声が思うように出なくて苦しそう…。曲が終わりMCで、一義君は「ごめん、風邪ひいちゃった。みんな歌ってよ。みんなで頑張ろう。」とオーディエンスに声をかけた。その彼の姿は、とても等身大で、まるで友だちに話しかけるような感じだった。そして、2曲目『1,2,3』からは会場内で大合唱が始まった。
ファルセットを多用する彼の歌い方は、とても喉に負担がかかるはずなのに…、一義君は『ジュビリー』『セブンスター』『ラッタッタ』などの、みなさんお待ちかねの曲を熱唱した。当日の高松は、11月の末ということもあり、かなり冷え込んでいてオリーブホールも肌寒かったけど、会場みんなで時間を共有している感じがして心は暖かかった。曲の途中で何度かMCがあったんだけど…とにかく、メンバー間の仲が良いのが伝わってくる。まるで、楽屋でリハーサルが終わって、みんなでふざけてるようなMCは、見ていて凄くほのぼのとしてくる。
 ライブ終盤にかけて徐々に調子が出てくる。『ショートホープ』『キャノンボール』『新世界』…そして最後のアンコール曲『ロックンロール』で、会場のみんなが一つになって飛びはねたあの瞬間…、オリーブホールの体感震度は一体いくつを記録しただろうか?それほど僕らを夢中にさせたステージは素晴らしかった。(欲を言えば『ハレルヤ』が聞きたかった…)一義君は、最後に何度も「高松にリベンジしに、絶対来るよ。また、絶対に来る」と言い残した。来年、彼が万全の体調で高松を訪れるのが、僕は今から楽しみで仕方がない。
 ある音楽評論家が、中村一義君の「博愛博」を「まるで、学園祭のような雰囲気だった」と評していた。ステージに、赤い絨毯が敷いてるだけというシンプルな舞台。派手な演出などなく…、人前に出ることが苦手だった彼のステージングは、まだまだプロレベルではないと言われても仕方ないのかもしれない。だけど、逆に多くの人は、それを嘘っぽくないと感じるのではないだろうか?多くのアーティストは、ステージ上でロックスターになろうとする。そして、実際にロックスターという虚像になっていく。そうなればそうなるほど、見る側の目には、全てが嘘っぽく映ってしまう。、だけど、一義君は、ステージ上で等身大の自分のままで歌ってる。きっと、それが多くの人にリアルに感じられるんだと僕は思う。=一義君の最大の魅力なのだろう。

text by masayuki okujima♂

 


 


SET LIST


1.犬と猫
2.1,2,3
3.ジュビリー
4.グッディ
5.セブンスター
6.永遠なるもの
7.メキシコ
8.ラッタッタ
9.グレゴリオ〜君の声
10.ショートホープ
11.キャノンボール
12.新世界
13.ひとつだけ

EN- 1.笑顔
   2.ロックンロール