群雄割拠のR&B界――それぞれのアー ティストが"本物"へのアプローチを試み、 個性の強さを前面に打ち出すのに躍起で ある。そんな中、男性ヴォーカル・デュ オとしてデビューした彼らのカリスマ的 歌声は、ある種大きな“個性”として瞬 く間にあまたの邦楽ファンを魅了、ファ ーストアルバム『The Way We Are』は 国内外合わせて300万枚という異例の ヒットを記録した。CHEMISTRYム即ち "化学反応"とはご周知の通り、今までの 活躍を見れば、彼らが如何に無限の化合 物を生み出してきたかは明確だ。そして、 今年に入り早々リリースされたセカンド アルバム『Second to None』。ファー ストのクオリティが高かっただけに、そ れ以上のハードルを越えることをエイム にしたであろう作品は、唯一無二な産物 を作った。そのアルバムを新たなアンセ ムにし、3rdツアーにして約2ヵ月にも 及ぶロングロードの中、遂に四国初上陸 を果たした。 

  オープニングではステージ両サイドから それぞれが登場、アッパーなナンバー『 MOVE ON』からスタート。歌の上手さは、 やはり群を抜いている。四つ打ちのビー ト感が更にエスカレーションしていくよ うな圧倒的なヴォーカルはさすが。予想 はしていたものの、むしろそれ以上の存 在感に鳥肌が立つ。「行くぞ!」という 川畑のサインに応えるように観客のヴォ ルテージも一気に加速。続けて5thシン グル『FLOATINユ』をお見舞い。会場の 緊張がほぐれた所で「皆さん初めまして !ケミストリーです!うどんうまいです、 サイコーです!今日は楽しみましょう!」 と川畑。次いで堂珍がはにかみ気味に 「ツアー18本目にして初四国です!遂に 来ました!」と声を挙げる。それにして も凄い声援、凄い人気…改めて二人はス ターなのだと実感。はやる気持ちを宥め るように、「まぁまだ時間はたくさんあ るので、あとでゆっくり…」というよう なコメントを挟み、少しスロウダウンし て『SOLID DREAM』。続いてセット上 に腰を下ろしメロウなナンバー『STILL ECHO』、ダイナミックなアレンジが効 いていたバラード『愛しすぎて』を披露。 ケミストリーは基本的にメインと呼び得 る作家を持たないが故に、様々な方面か らの楽曲提供アプローチがあり、そのミ スマッチさが面白いものもある。中でも この2曲は、お馴染みケツメイシのRyo jiとそのファミリーであるYANAGIMAN の名コンビが奏でたもので、彼らのムー ドに見事ハマっているのに驚く。(さす がは松尾潔!)「次は皆さんが最近一番 聴いた曲だと思います」という川畑のM Cより名曲『My Gift to You』。二人の スピリットが宿る包容力のあるその声は、 まるで乾ききった大地にゆっくりと水が 浸透していくかのように、心の中を満た してゆく。えも言えぬ充実感に浸ってい ると、今度は一変して場内を盛り上げる ような『It Takes Two』、スパニッシ ュなアレンジに乗せライブでは定着しつ つあるナンバー『Running Away』。ス テージセットの壮大さも去る事ながら、 ライティングの美しさも手伝って、より 一層二人の輝きが増す。アコースティッ クバージョンで、しっとりと歌い上げた 『BACK TOGETHER AGAIN』、ピアノ 演奏による『月夜』を歌い上げ、穏やか な雰囲気になったところで、ちょっとし たブレイクタイム。川畑・堂珍のオフの 過ごし方などプライベートな話しで盛り 上がる。まず川畑が休憩時間にスロット へ行った事を面白おかしく話すと、堂珍 は玉藻城へ足を運びのんびりしたと言う。 ここでも全く違った二人の個性を垣間見、 納得。また、初四国という事で素敵なプ レゼントもあった。「皆、何したら喜ん でくれるのかな?」という堂珍の問いか けに、会場からは『チェルシー』歌って !『爽健美茶』聴きたい!という物凄い ラブコール。参りましたとでも言うよう な表情で、アドリブを聴かせた二人。 (もちろん2曲とも)それはそれは、特 別な一時だった。そして、もう一つの特 別と言えば、今回のアルバム中にも納め られている二人の初ソロ作品。堂珍は『 RIP TIDE』をメンバー全員のコーラスと いう形で魅せ、川畑は『No Coler Line』 をひたすらハッピー&ジョイフルに!そ の高揚感のままライブは終盤戦へと突入。 皆が歌って!と懇願した『Motherland』、 誰もが聴きたかったデビュー曲『PIECES OF A DREAM』、超ハイテンションに『 CユEST LA VIE』〜『B.M.N.』のメドレー と怒濤の攻撃。本編ラストは2ndシング ル『Point of No Return』で締めくくっ た。美しいシンメトリーを描く全く異なる 二つの個性、川畑の“ビター”な部分と堂 珍の"スウィート"さが、ジャストバランス で拮抗し合い、コーラス部分ではお互いに 主張しながらも美しくシンクロしてみせる。 そこにはブラウン管を通し抱いていたソリ ッドで崇高なインプレッションとは全く正 反対の、エモーショナルで躍動感溢れる姿 が存在する。ステージを縦横無尽に行き交 い、アクロバティックなスキャットをくり 返す…軽快典雅な二人の姿、皆さんには想 像ができただろうか。いい意味で固定概念 を裏切られた…そんな一時だった。

  デビューしてわずか2年、ここまでの才 覚を見せられるとやはり次にも期待が高ま る。そうやって常に多くの期待を背負い、 高いポシビリティーをも更にクリアしてい くからこそ、彼らにしかなし得ない不思議 な化学反応がおこるのかもしれない。それ は奇跡に近い神業的な何か。歌声だけが呼 び起こすもの。 

text ●aco nagata●

SET LIST 
1.MOVE ON
2.FLOATIN' 
3.SOLID DREAM
4.STILL ECHO 
5.愛しすぎて 
6.My Gift to You 
7.It Takes Two 
8.Running Away 
9.BACK TOGETHER AGAIN 
10.月夜 
11.RIP TIDE 
12.No Color Line 
13.Motherland 
14.PIECES OF A DREAM 
15.C'EST LA VIE〜B.M.N.(BIG MAN,NOW) 
16.Point of No Return 

EN1.マイウェイ
EN2.Let's Get Together Now
EN3.You Go Your Way