98年春、大学のサークルで知り合った江口亮(VO.&Gr.)と和田勉(Gr.)の2人で結成。地元・名古屋を中心にライブ活動を展開していたが、2000年8月にリリースした1st アルバムのリリースを気に東京、大阪などにも足を広げ、内田崇仁(Ba.)、加藤由浩(Dr.)を加え現メンバーに。今や名古屋に居ながら全国区で活躍する名古屋気質の頼もしいヤツら。
 Interview●門屋奈緒

 

 

 

 

 

 自称「よくしゃべる天邪鬼」、リーダー江口の肩書きは、アーティストでありながら代表取締役。企画発案〜事務所経営など、自分たちの手で全てを完結させている完全独立採算制をとっている珍しいバンドだ。

江口「以前事務所に所属してたんですけど、既存のシステムに疑問を感じてしまってね・・・大人の階段を落ちてしまった(笑)。でもどんな事でも自分たちの事だって捉えられるようになった。ライブにしても自分の飯のために活動しているって感じだし、盤を作る為の活動、じゃなく、盤が売れる事が自分の生活に関わって来るんだって、そこまで見えるんですよね。それはいいことだと思うんですよね、作品がよりリアルになっていくし、パフォーマンスもリアルになっていく。切り替えだけはきちんとやらないといけないけどね。今はメンバーをはじめ信じていける人が身の回りにいるから大丈夫かな?自分たちの手に負えなくなったときに初めてスタッフという控え陣が出て来るんであってね。でかい枠が初めにあってそれを人で埋めていきましょう、じゃなくて、でかい枠にしていくために人をどうやって回りに増やしていくのか、なんですよ。これは明らかに違う事だし。」
「経営者」の気質を感じさせる言葉の数々にうならされる。

Stereo Fabrication of Youth。しかし長いバンド名だ。
加藤「"若者によるステレオのでっちあげ"もちろんFabricationには作る、響くの意味合いもありますが。最初の頃にドラムを叩いていていた大学の先輩が付けてくれたんですけど、もともと僕らのキャッチコピーだったのがそのままバンド名になったんです。当時はバンド形態じゃなかったし、宅録でやってたんで、そのでっちあげ具合をね。」
3枚目のアルバム『albino』がリリースになった。タイトルには、"突然変異の先天性色素欠乏症の生物の総称"などという意味合いがある。

加藤「アルバムが出来てからつけたタイトルなんです。曲たちのでき方が、突然変異的な感じだったし、"白い"というイメージも響きもピッタリだったから。」
白い物にいろんな楽曲で色がついて、カラフルなアルバムになっていったって感じだ。しかし突然変異、というより確実変異、着実に変化していく感じもある。
和田「鮮やかな混沌。ただカオスという意味じゃなくて、ジャケットにあるように、いろんな色が混ざり合って出来あがった混沌。」
1曲目『Holomorphic』(完全変態。幼虫がサナギに、サナギが成虫に、といように姿を変えていく事をあらわす学術用語。)はワクワク感をあおる清清しいオープニングにふさわしい曲。脱皮をして生まれ変わる、新生"ステファブ"を感じる。
江口「『首都高ドライブ』と『sunrise』と言う流れがあったので、それに並列なものをずらーっと作る必要はないかなって。色んな次元のものがあるのが作品としていいのではという気持ちで作りました。特に手が込んだ事をしたつもりもないけど、『首都高ドライブ』と『sunrise』の間の足りない所をどうやって埋めていこうというのは初めからありました。アルバムの全体像としてはライブ感。ライブでやってカッコイイ楽曲。」
和田「曲ごとにテーマを振り分けて作りました。この曲ではこれを達成しよう、というのがあったんです。この曲ではメロディの起伏と日本語の起伏にこだわろうとか、この曲では具体的な事を絶対言わずに想像力を掻き立てる詞の世界を作ろうとか。あとは、アルバムのために書いた歌詞もあるし。『革命ライター』はオープニングだからなるべく簡潔な言葉で言い切るようにしよう、とか、真ん中の辺りは次元を飛ばしてあげたかったので少し遊んでる感じにしたし。」

内田「前回は前回で振り切ってる感があって、ライブとはまた違うものという頭があったんですけど、今回は4人で再現することを前提としたものを作りました。成長度合いのバロメーターが上がった、前作よりもより肉体的であってリアリティが増して、結構生々しいかな?」
江口「盤って歴史だと思うんです。その歴史がすごい魅力的なバンドだと思うんですよね(笑)。サウンドの変化も楽曲の変化もあり、まあ過去に作ってきたもの、そして今回のこれを作ったことによって、今後また幅が広がりますよね。」 和田「十分カッコつけ済んだんで、これからはベタな感じやストレートなのもやっていけるのかなって(笑)。」

江口「ミュージシャンってどういう事だろうというのはよく分かって来ました。ミュージシャンとして飯食って行くんだっていう気持ちはこれからももっと必要になって来るんだろうなって思うし。音に対してこだわりのないミュージシャンは、ミュージシャンでなくて演説家でいいんだと思うんですよ。そうじゃなくて、僕らはミュージシャンなんで、音にこだわって、音で人の気持ちを動かすくらいのパッションと感情論じみた物のダブルパンチがないとだダメなんだなって。音を商売にしてる"音屋さん"だと思うんですよ。ミュージシャンとしての能力は持ってて当たり前、これがないとダメだよね。でも、ライブとなった時は、それ以上にオリンピック選手のような鍛錬が必要で(笑)、これはまた創造とは別の能力であって、それはやっぱ少し甘く見てたかなっていう。オリンピック選手と同じような努力ばかりをする人たちもいると思うんですよ、何十箇所とツアー回って。それはそれでいいんですけど、自分たちがこっち(音楽の創造能力)の人間だとすると、じゃあこっち(ライブ能力・体力)があったらもっといいじゃないですか?だからね、最近、走ろ・・・みたいな、泳ご・・・みたいな(笑)。」

楽曲の上でも、人間としても、とにかくいろんな顔を持ったバンドである。まだまだバイトをしながらの音楽活動の日々であるし、事務所の経営にまつわるすべてを自分たちの手で切り盛りしている。しかし今回彼らに会って、今までの何かが吹っ切れてさらに光の当たるところへと突き進んでいく姿を感じずにいられなかった。進め!ステファブ!輝け!ステファブ!

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