ジャパハリネット徳島大学蔵本祭 LIVE REPORT
10/29(金)徳島大学蔵本キャンパス内 大塚講堂
text●MAKIKO NAITO

●“どうしてこんな気持ちになるのだろう?”ここ最近の彼らのライブを観る度に湧き上がる疑問なのだ。この2年ほど、私はジャパハリネットのライブを何度か観る機会に恵まれた。私はその度、彼らの成長ぶりに驚かされてきた。大きく成長して次のステージに戻ってくる彼らに出会う度、いつもいつも新鮮な感動が胸を躍らせる。そしてそんな気持ちとは全く別のところで、説明のつかない感情が生まれるのだ。そう、『泣きたくなる』のだ。

 もちろん他のアーティストのライブ中、涙を流した事はある。ただそれには、歌声や楽曲が琴線に触れたという説明のつく理由があるのだ。だがしかし、彼らのライブにはもっと大きな他の理由がある気がしてならない。何故なのか、答えを探して挑むような気持ちで私はいつもライブを観てきた気がする。この日のライブでもどんな新しい側面を見ることができるのか、私にとっての答えは出るのか、そんな想いを胸に徳島へとやって来たのだ。

 ステージ上で演奏する彼らは、少し大人びて見えた。数々のライブをこなし、夏の野外などの大きなステージで得た自信が彼らをそう見せるのだろう。現に、観客との距離や独特のMCは良い意味で以前となんら変わりはない。客席から、ありったけの想いを込めて突き上げられた拳。その想いに反応するように力強く放たれた音。一つになる瞬間を何度も観た。なんてまっすぐで気持ちの良い光景なんだろう。そう思った時に、少しだけ答えがみつかった気がした。私が忘れてしまった物を見せつけられてせつないのだ。イヤな大人になったなと、ふと自分を振り返る事のある私には、まっすぐに、あるがままをぶつけてくる彼らはとても眩しい。心のやわらかい部分を突かれてしまった、そんな気がしてならない。大人になればなるほど増えてきた荷物を捨てていき、そして忘れたフリをする。それはすなわち生きていく事の悲しみである。だが彼らはそんな悲しみを跳ね返し、強く、真っ直ぐに突き進んで行くだろう。変わりゆくもの、変わらぬもの。彼らが手にしたもの、背負ったもの。さらけだし、もがき、闘いながら強く今を生きる彼らには、打算も計算も無い。なんて潔くて鮮やかなのだろう。メジャーデビュー後、今まで何十回となく繰り返し聞かれてきたであろう“デビューして何が変わったか”という質問は、おそらく彼らにとっては何の意味も無いだろう。少なくとも今、目の前で笑顔でライブを続ける彼らにとっては。歌いたい歌があって、伝えたい想いがあって、そしてそれを受け止める観客の、“ただただ好きだ”という気持ちが彼らを動かすのである。そんな純粋な気持ちは美しく、強くて儚い。だからきっと、私が、そして誰もが魂を揺り動かされるのだろう。

 終演後、終わりを告げるカゲアナを掻き消すように、アンコールの声は鳴り止まなかった。彼らはきっと、その声を背にこれからも大きく前へと進んで行くだろう・・・。

Set list
1.It's a human road
2.流線と爆撃
3.蒼が濁ったナイフ
4.蹴り上げた坂道
5.崩れた未来の隙間から
6.鼓動の矛先
7.楓葉
8.遠きトモシビ
9.あるがために
10.哀愁交差点
11.はりねずみな男
12.ジオラマの花
13.少年の空
14.贈りもの
15.遙かなる日々
16.物憂げ世情