ASIAN KUNG-FU GENERATION
TOUR「five nano seconds」
2/7@松山サロンキティ
text●Hiroko Okano photo●aco nagata

松山。2月7日、土曜日。空は薄雲り。空模様が気になって空を見上げていると、このツアーでは公演日に必ず雪が降るという奇跡が、ここ松山でも…。「この街では繰り返しの業 積もりゆく過去 風に舞う粉雪」(『粉雪』)この街にもさまざまな想いを胸に、彼らの歌を待っている人々がいる。チケットはわずか数分で完売。彼らがこれほどまでに求められているのは何故か。彼らの歌を聴くと、どうしてこんなに胸がうずくのか。

 飄々とステージに登場した彼ら。Vo.後藤のギターリフから始まるその曲は初めて耳にするメロディ。新曲『サイレン』でフロアの温度はいきなりヒートアップ!秀逸なメロディ、限りなくこだわりを追究したぶ厚いサウンド、キャリアに裏付けられたキレのあるアドリブにすでにノックアウト気味。その激しいパフォーマンスとは対照的にボソボソっと照れたようなVo.後藤のMCや、言葉に困ったのか、影絵のきつねを両手で作り、チユーさせて「オレ、何やってんだろ…」つぶやいたりする微笑ましい一幕が観客をリラックスさせる。次第にグルーヴは躍動し、波動はうねりを生んでゆく。全曲全く手加減ナシ、息つく間もない怒涛のプレイに、オーディエンスは拳を振り上げ体を委ね、会場そのものが揺れていた。――現実を生きていく中で感じずにはいられない孤独、無力さ、訳もなく感じる焦燥感、埋まらない心の隙間。しかし、それらを見つめ肯定することで、未来への希望へと昇華されていく。彼らはロックによってそれを成し遂げようとした。逃げずに現実と対峙することで見えてくるもの。愛を切実に求めるこころ、誰かと繋がっていることの幸せ。彼らの歌からは、誰かと繋がりたい、繋がっていたいと切実に願う自身の想い、それが痛いほどリアルに、ダイレクトに伝わってくる。

 でもそれだけじゃない。何故だろう?満たされていくこの感じ、この一体感!!オーディエンスはそのまま彼らを映す鏡だ。痛みを共有し、共に前(未来)へ進みたいと心から願う。「繋がりたい」その想いが伝染するようにオーディエンスを巻き込んでゆく。Vo.後藤がニヤリと笑う。会場が一体と化したその瞬間に全身の鳥肌が立った。「繋いでいたいよ 君の声が聞こえた日から萌える色 伸ばした手から漏れた粒が 未来を思って此処に光る」(『未来の破片』)その興奮と熱がいつまでも冷めず、大切な人に電話したくなった。

SET LIST
1.サイレン
2.無限グライダー
3.サンデイ
4.フラッシュバック
5.未来の破片
6.粉雪
7.その訳を
8.アンダースタンド
9.電波塔

10.N.G.S
11.自閉探索
12.E
13.エントランス
14.遥か彼方
15.羅針盤
16.君という花
17.ノーネーム
E1.Hold me tight
E2.12