2004/5/12(ewd)松山市民会館
text/photo●門屋奈緒

 ゴージャスだった。それはセットが、衣装が、というのではなく、ヴォーカリストが5人集まるというぜいたくを目の当たりにして感じた事。とにかく圧倒的な声の力には目を見張るものがあった。足の先、手指の先までもが、"声"へと繋がるひとつの楽器のようだ。一糸乱れぬ声、5人が紡ぎだすハーモニーは、人間の声の表現には無限の可能性があるという事を教えてくれた。ゴスペラーズの醍醐味アカペラや、ターンテーブルを盛り込んだバンドスタイル、そして「ショートショートショート・ストーリー」=芝居までもが織り込まれた今回のコンサート。そして、ひとりひとりの動きまで綿密に計算されたステージングで、ただ聴覚で楽しませるだけでなく、視覚にも強くアピールして来る。音源だけでは感じ得る事の出来ないライブならではの「静のゴズペラーズと動のゴズペラーズ」がそこに居た。

 MCでは、村上によるご当地ネタ
が飛び出し会場を沸かせた。これが異様なほどに詳しくメンバーも客席も驚きでざわめいた。佐田岬メロディーライン、岬(ハナ)アジ、しまなみ街道・・・。ミュージック・ステーションで一緒になったという我らがジャパハリネットの話も、「ここが地元でしょ?!」ということで話題に上り客席も誇らしげだった。(かなり好感度高かったですよ!)

 
後半では、客席を4パートに分けての(私たち素人には高度な)ハモリでホール中を響かせた。その時ふと、1本のカセットテープの事を思い出した。それは20数年前に我が家で録音されたもの。家族の会話や歌の数々が、ノイズだらけの古びた音質で残っている。幼い私と3つ違いの姉は、覚えたての歌をハモリながら、ズレながら、大笑いしながら両親の前でラジカセに向かって吹き込んでいた。背後では、父と母の優しい笑い声、やわらかい午後の陽気に家庭のにおいが包まれていた。「声で遊ぶ」「歌で遊ぶ」事が楽しいという事は、幼い頃から既に皆が持っている感覚なのかもしれない。今日のライブがこんなに楽しくて心地いい所以かもしれない。ゴスペラーズが運んできたのは、意外にもこんなシアワセ・ノスタルジックだった。


New Album
「Dressed up to the Nines」
Now On Sale!

デビュー10年目を迎えたゴスペラーズ9枚目のアルバム。
タイトルの意味は「ばっちり決める!」。
前作「アカペラ」が"声だけ"という丸裸な作品だったのに対し、今作は今までの彼らの歩み、実力、貫禄がストレートに表現され、何も着飾っていないように見えて、彼らの経験自体でばっちり「おしゃれ」している作品。