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3/5(土)高松オリーブホール  text●Yutaka Sato(TJKagawa) photo●aco nagata
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彼の口から放たれる「嘘がない言葉」。そしてそれを自分と重ね合わせるオーディエンス。ここには、音楽の原点である「感情の共有」があった。

●この日ステージ上にいたのは、まさに「スネオヘアー」彼自身だった。
 以前の彼は、物事を斜めから捉え職人的技法でポップソングを作り上げることを武器としていた。しかし今回、彼はその武器を捨て去ったのである。アーティストを演じるのではなく、「スネオヘアー」=渡辺健二が思ったことをそのままパッケージした作品が、『フォーク』だ。そこには嘘のない、彼の感情が詰まっていた。
 そして迎えた当日、その「嘘のなさ」はライブでも体現されていた。スタンダードな4ピースバンドを背に歌う彼はTシャツ一枚。何を飾り立てるでもなく、姿も音もただ素をさらしていく。本人はこのシンプルなスタイルを「地味」と謙遜していたが、これはむしろ不必要なものを削ぎ落とし、歌、そしてメロディを明確に伝えるための「洗練」と言った方がより適切だろう。『ストライク』や『ヒコウ』のようなアッパーな楽曲では拳を突き上げ、『フォーク』といったメロウな曲ではじっくり耳を澄ますオーディエンスを目の当たりにし、僕は確信した。ひとつひとつ丁寧に発せられる言葉たち、そこに込められた彼の思いは、聴くものに確実に伝わっていることを。
 昨夏のMONSTER baSHに出演したとはいえ、高松でのワンマンは初。香川のノリはどうか、自分のステージはここで通用するか、…そういう意味でこのライブは「試験みたいなもの」だと冒頭のMCで語った。だが、彼とオーディエンスの心が極限まで肉迫したライブで、その瞬間を体感した人間ならば、試験の結果なんて分かり切ったことだろう(合間合間でいかんなく披露された天才的爆笑MCなんて、間違いなく満場一致で満点!)。
 快楽、苦悩、葛藤、誰もが抱える感情を、お互いが吐露し合い共有する、…それはライブの醍醐味ではないだろうか? 終演後の満たされた心は、僕らに音楽の原点を教えてくれているようでもあった。

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SET LIST
1.コミュニケーション
2.ストライク
3.アイボリー
4.LIST
5.会話
6.夢の続きのようなもの
7.自我像
8.over the river
9.フィルター
10.現在位置
11.フォーク
12.くだらない言葉 はしゃぎすぎた場所
13.ヒコウ
14.ウグイス
15.ピント
16.セイコウトウテイ
EN1.訳も知らないで
EN2.テノヒラ
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