取材終了の時間が来た時「もっとこの人と話していたい」と心から思えた数少ないアーティストだった。
耳なじみのいいトーンで言葉を選びながらゆっくりと歌うように話す、インタビューがまるで癒しのように感じられた素晴らしい時間だった。
彼女からは大学を卒業しこれからは音楽に打ち込める事へのワクワク感と強い決意のようなものも感じた。
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interview●門屋奈緒
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LIVE!2007
5/14(月)高知県民文化ホール・オレンジ
5/16(水)サンポートホール高松・大ホール
5/17(木)松山市民会館・大ホール


●松山の印象は?今日の松山の「そら」は?
さっき鯛の乗ったお昼ごはんを美味しいねって言いながら食べている時に、大学の卒業の結果を代わりに見に行ってくれてた友達から「ちゃんと卒業できてたよ」って電
話があったので、とてもメデタイ御膳になりました!運命というか、この土地でその時を迎えられていいイメージがつくなって思いました。松山の空はとっても広いです。
屋根が低くしっかり作られてて瓦も鮮やかで、東京よりも数段空の色もいいし広いし。ここで今回のアルバムを聴いたら気持ちいいんだろうなって思いました。

●アルバム「そら」に込めた思い
いろんな空模様…雷、雨、もちろん晴れ・・・それらをひとつの「空」という人格に例えました。その移り変わりの中で、人間が悲しい出来事を起こしたりする。そういうのも全部空が見ているんだという気持ちを込めて作り、アルバムの最後に収録しました。「そら」を通じて伝わるメッセージがきっとあると思っています。9.11や、いじめ問題など、悲しいニュースがいっぱいある中で音楽家として何ができるのかを常に考えていたんですけど、やっぱり音楽で表現する事しかできなくて。空はひとつしかなくて、どんなに遠くに離れている人でも空で繋がっているんだし、「空はいつまでも変わらない」「どこまでも自分を生きてく」という歌詞が私は大好きなんですが、悲しい出来事や楽しい出来事も全て空は吸い込んで雨に変えたり、太陽に変えて光に変えたり、雷に変えたりしていると思うんですよね。「ジュピター」で言い続けていた「ひとりじゃない」という言葉、それを改めて人に伝えることができると思いました。

●男性よりも女性の方が空を意識するのかも。
笑ったり怒ったり泣いた後には虹がかかったり。女心・・・じゃないですけど。そうですよね、私も喜怒哀楽が激しいので。そういう気持ちって持ってていいのに、
それを押し殺さなければいけなかったり、人と違った事をしちゃいけないという社会のような気がしてて、それがあまり納得できないんですよね。自分は一人しかいないからこそ生きている意味があるんだし、一人一人が尊重されていれば争い事もなくなるし。そんなこと考えると喜怒哀楽って素晴らしいものだと思うんです。でもなぜ怒っているのかを人に「伝える」事を忘れちゃいけないと思うんですよね。怒って話しちゃうと人は聞かなくなっちゃうし。私もよく反省するんですけど。母に「音楽みたいに話せば辛辣な言葉が出ない、不器用でもゆっくりゆっくりしゃべればちゃんと人に伝わるんだよ」って教えてもらってから、こういう平原綾香というキャラクターが出来たと思います。できるだけ人が共感してくれる言葉があればいいなって、いつも祈りながらしゃべっています。

●学生でいながら、デビューする事になった経緯は?
大学の授業で聞いたのがホルストの「木星」だったんですね。これは歌にしたら絶対今の自分の気持ちが伝わるとひらめきました。つまりちゃんと大学に行ってたから「木星」と出会えて、「ジュピター」でデビューできた訳です。まじめに生きる事も大切だなって。ちっちゃい頃からずっと音楽家になりたいと思っていましたので、歌手としてデビューすると決まった時は、やっと道筋が出来て幸せだなって思いました。もしこういう世界にずっといて学校に行っていなかったら、まだ未熟で学びの時期なのに大切なことが分かんなくなっちゃう、私よりも目上のいろんな人たちが助けてくれて優しくしてくれる、そういうことが当たり前なんだと勘違いしている自分がいたかもしれないと思うと、すごく怖くて…だから学校に行って普通の大学生として生活した事で今ちゃんと立つべき場所が分かるし、自分にまだ何が足りないのかという事も分かる、というとても恵まれた環境でした。

●人に「感謝」するという心を強く持っている人。「ありがとう」という言葉の持つ力、どう伝わりどう変わっていくかを考えている時期だったので「そら」は私に見事にハマった。
人間が唯一持っている感情だし。いい言葉を使うことが大切。今回のコンサートはこのアルバムを聞いてない人でも楽しめる内容だと思います。今の世界に繋がるエッセンスが全てに入っているので。山や湖も写真を見てきれいだなって思うよりも、やっぱり実際行って見た方が感動するように、きっと曲たちも、生で聞くから感動して得るものがあると思いますので、まずはコンサートに来て欲しいなって思います。


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