
なんてかわいい女性(ひと)、こんな歳のとり方をしたい!と不思議な胸キュンを覚えてしまった。デビュー25周年を迎えたクミコは歌い手としても素晴らしいのだけれど、私は彼女の“人間”にホレた。歌に心を込めて歌を生かす、それは歌い手の心の深さゆえに成し得る業。クミコによって再び命を吹き込まれた70年代の名曲たちが喜んでいるように思えた。
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interview & photo●門屋奈緒
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LIVE! 2007/6/27(水)松山市民会館
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●歌が輝いていた70年代のヒット曲をカバーしたAL『十年〜70年代の歌たち〜』。30年たった今、私の世代でも聞き覚えのある曲がいっぱいあるのに驚いた。「みなさんのお父さんお母さん達が聞いて育った音楽達なんですよね。今のように世代ごとに聞く曲が違うのではなくて、否が応でも全員が知ってた、みんなが口ずさめちゃう歌というのがものすごく多かったんです。歌が万人に行き渡っていた、歌にとっては幸せな時代だったと思います。あの時代は家庭に1台しかないテレビを3世代が一緒に見ていたんです。家庭の団欒というと、紅白歌合戦をはじめそれらの流行歌−今回収録している曲たちと切っても離せないものなんです。」“歌が生まれた時代”。70年代は貧しくも美しく宝石のような時代。そして音楽界にとっても重要な時代。「60年代まではアメリカの曲に日本詞を付けて歌うという模倣のような時代、80年代はアイドルの時代。70年代は、自分たちのメッセージ曲を作って歌うシンガー・ソング・ライターというスタイルの人たちの新しい波と、阿久悠という作詞家がすごく濃密なそれまでにないような音楽の世界を作った歌謡曲全盛時代。その両方がぶつかり合った時代。流れがぶつかり早い所の魚は身が締まって美味しいように、タフで美味しい歌がたくさん出てきましたよね。万博で幕を開け、三島由紀夫が割腹自殺しちゃうという、なんなのこの時代は!みたいな(笑)。光と影が極端だったんですよね。歌っていうのは時代と切り離せないから。」このALの収録曲は、各界の著名人に選曲してもらったという珍しいパターン。それはクミコの挑戦であり自分との対峙でもあった。「その時代を生きてきた人たちの想いごと背負って歌うという挑戦。でも思ってもみない曲が選ばれて、え〜この曲〜!?ってのも実際あった(笑)。拓郎さんの『今日までそして明日から』は、リアルタイムで聞いていた時は大嫌いだった。『私は今日まで生きてみました』という斜に構え方(笑)?でも30年ぶりのつま恋コンサートをテレビで見て、何万人のお客さんも皆『生きてみました、生きてみました』って歌ってるのを聞いた時、人生には生きてみましたとしか言いようがない事が確かにあるんだよ。生きて『来ました』って片意地張って頑張ることでもなかったのかもって、30年後にやっと正解を得たというか。自分が歌った時には、まるで自分の生き様を人前で宣言をして自分の人生をこの歌を借りて総括していくような気がして背筋を伸ばさずにいられませんでした。不思議だよね、あんなに毛嫌いしていた曲なのに、どうしてこんなに自分と重なっちゃうのよ?!今回の最大の発見でしたね。ほんとこれはびっくりしちゃった。」話題のタイトル曲『十年』は中島みゆきがクミコの為に書き下ろした大人の女性の片思いの歌。「カバー10曲は過去として、未来を見据えたオリジナル曲、70年代の曲たちの素晴らしさを含みながらこれからどういう曲を歌いたいかを示すシンボルのような曲を入れたかったんです。みゆきさんは75年の『時代』という曲さながら時代の歌を一線で歌ってこられた。切ないけど胸を張って歩いていく、カッコイイ自立した大人女性を提示してくれたのは、私はこれから先かくあるべきと指し示してくれた気がしました。」団塊世代の人たちが青春時代に口ずさんだ歌が新しい形で蘇った。その時代と時代を彩った名曲たちを懐かしむと同時に、この『十年』という1曲が入っていることによってもうひとつ背中をグンッと押される。ヘタしたら忘れ去られたかもしれない曲たちが輝きを取り戻したAL、団塊世代にも勇気を与えこれからの道を明るく照らす道標ともなったのでは。

★AL
『十年 〜70年代の歌たち〜』
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