稲川淳二・インタビュー
DOMO PRESS
2025/08/13
MYSTERY NIGHT TOUR 2025 稲川淳二の怪談ナイト
稲川淳二 interview
1993年以来、一度も立ち止まることなく継続してきた夏の風物詩、33年目を迎える稲川怪談。今年のテーマは“ひんやり喉越しのよい夏の思い出”。原点回帰とも言える“怪談らしい怪談”にカラフルさ(色味)をプラスしお届けする。
text●aco yamazaki
★STAGE★
9/15 (月・祝) 高松国分寺ホール
●夏と言えばこのお方、老若男女全世代が認める怪談界のパイオニア・稲川淳二。30年にわたりオンリーワンかつナンバーワンであり続けながらも、更なる境地を目指し進化し続ける姿に多くのファンが魅了され、また来年もと会場へと足を運ぶ。今年は11/16(日)那覇桜坂劇場まで全国39会場52公演を開催予定(2024年よりも2公演も多いというから、そのスタミナとメンタルには毎年感服する)。
昨年のインタビューでは“ライブ感=怪談の持つ魅力や楽しみ方を伝えられたらいいなぁ”と語っていた稲川さんだが、さて今年の見どころは?
「老人がする昔の話を今回私が舞台で話すんですけどね、それを話す私ももうすでに老人なんですよね。だからその年代の方の話す怪談の独特の色合いや魅力を皆さんに分かっていただけるんじゃないかなと。ただ怖い、楽しいだけではなく、いい夏の思い出になればなと。暑い夏にひんやりと喉越しの良い怪談をお届けできたらと思っていますよ〜。来年も再来年も♪夏が来れば思い出す〜冷やし中華と稲川淳二〜ってなもんでやりたいと思います(笑)」
本来の怪談の魅力=“怪談らしい怪談”を今年は皆さんにお届けしたいという稲川さん。原点回帰という言葉が頭に浮かんだのだが、稲川さんの中で何か変化や思うことがあったのだろうか?
「最近怪談ブームという言葉を多くの方が使うんですが、実は怪談ブームっていうのはもっと前にあって、正確に言うと今は“怪談師ブーム”なんですよね。昔よりも圧倒的に語り手が増えた。全国から私に連絡をくれて稲川怪談の芝居をする劇団があったり、怪談ナイトっていうグループがあったり、とてもありがたいことだなと思うんですね。怪談というのは大事な文化だったり、人の思いが語られる。しかも落語や講談ができなくても怪談は誰にでもできるんです。ただ最近の怪談で間違っちゃいけないのは、恐怖だけを与えようとか、ショックを与えようとかで言葉が乱暴になってしまうことなんですよね。危惧しているのは古い言葉や、そのイントネーションが分からない、知らないとう方が増えていること」
だからこそ、本来の昔の怪談を自分が伝えていきたいのだと。皆さんが聞き取れるよう、方言でもいいからきちんとゆったり話す。言葉本来が持っている魅力を引き出すために、原点に立ち返ることが必要なのだろう。稲川さんのお話に引き込まれる理由の一つは丁寧な言葉の選び方や、言葉の使い方にあるのだと改めて実感した。公演までの期待が更に高まるところだが、ここで気になる内容を少し伺うと…
「お話の中で、それが語り手だったのか実は私だったのか?とオーバーラップするような感覚を楽しんでいただけるものをご用意しています。その話の中からお祖父ちゃんお婆ちゃんが私を誘ってくれるような、そんなタッチのお話。あとはカミソリや刃物でシュッと切られたような…痛さはないけどグッと血が滲んできて、おい!ちょっと待てよというような怖さ。ほかには日常にあるごく普通の瞬間に怖いんだけど、それが過ぎ去ったあとに“あれ?あいつ今何どうしてんだろうな?”というような、生活の中にポーンと訪れる恐怖なんかをお話したいなと」
あたかも現実に自分が体験したかのような、不思議な感覚に誘ってくれるストーリーが稲川さんの語りでどんな風に仕上がるのか?実に楽しみである。「話の中にじゅんじぃが割り込んでくるような感じかな?私も大分妖怪が入ってきてるからねぇと」目を輝かせて楽しそうに語る稲川さんを見ていると、今年もきっと最高の怪宴になることは間違いないのだと思う。
「心霊写真もまた更に怖いものを用意していますよ!それから今年は四国にピッタリの四国の海のような深い藍色を思わせる話があるので楽しみにしていてください。いい夏の思い出、いい時間をみなさんと過ごしたいと思っていますので、よろしくお願いします!」
色味を感じさせる怪談もこれまた楽しみだ。夏の終わりに、皆さんぜひ会場でじゅんじぃのお話に耳を傾けてみては?